(1)不自然、不合理な供述
(横浜地裁平成12年5月11日判決)
被害者は9歳の女子で、狭い通学路を駆け足で横断した被害者に加速して進行してきた加害者運転の原付バイクが衝突し死亡。事故後、加害者は倒れている被害者を大声で怒鳴り救護もせずにタバコを吸っていた。また、刑事裁判でも事故の責任を軽減するために不合理な供述。
・判決時の慰謝料の基準 2,000万円
・増額された慰謝料の額 2,800万円(800万円増額)
交通事故の慰謝料が増額される場合とは?


弁護士 谷原 誠 (みらい総合法律事務所)
みらい総合法律事務所では、交通事故の被害者からの相談が年間848件(2009年)も寄せられており、豊富な実績があります。交通事故の専門書も複数出版し、事務所内で研究活動も行っていますので、テレビのニュースから取材も受けています。
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加害者の事故後の態度の悪さが斟酌され、慰謝料が増額された判例
(2)謝罪なし
(大阪地裁平成12年8月25日判決)
被害者は20歳大学生で、青信号で国道の交差点をバイクで走行中大型トラックに衝突されて死亡。加害者は赤信号にもかかわらず制限速度を上回るスピードで交差点に進入し、かつ被害者を発見してもクラクションを鳴らすだけで避けようとせずに被害者に衝突した。その後被害者の遺族に謝罪もなかった。
・判決時の慰謝料の基準 2,000万円
・増額された慰謝料の額 3,000万円(1,000万円増額)
(3)証拠隠滅(同乗者に虚偽証言強要、事故後に飲酒等)
(大阪地裁平成9年12月11日判決)
被害者は25歳の美容師見習い女性で、原付バイクで交差点を直進中対向車線から右折してきた加害者運転のトラックと衝突し傷害を負った。加害者は事故後、被害者を救護せずに逃走し加害車両の修理を依頼するなど証拠隠滅を図った。
・判決時の慰謝料の基準 370万円
・増額された慰謝料の額 500万円(130万円増額)
(4)救護せず、逃走、ひき逃げ、逃走しようとする
(大阪地裁平成10年1月27日判決)
被害者は30歳の男性で、片側2車線の右側道路を進行する車両に同乗中、左側車線を走行する加害者運転車両が安全確認をしないで右側車線へと進路変更したため被害者の同乗する車両に衝突し、この車両が川に転落して被害者は死亡。加害者は事故後、被害者を救護せず逃走。
・判決時の慰謝料の基準 2,600万円
・増額された慰謝料の額 2,900万円(300万円増額)
(5)加害者側からの訴訟提起
(神戸地裁平成12年3月30日判決)
被害者は29歳で親の経営する工務店で勤務する男性。被害者が原付バイクで優先道路を交差点を走行中、加害者運転車両と衝突し後遺障害が残った。事故後、加害者は被害者の入通院の頻度などを繰り返し照会し、自分にはこの被害者の損害については責任がないとして調停を申し立てさらには提訴。
・判決時の慰謝料の基準 400~470万円
・増額された慰謝料の額 850万円(380~410万円増額)
(6)被害者に責任を転嫁するような言動
(東京地裁平成14年4月18日判決)
被害者は19歳の男子大学生で、バイクを運転して青信号で交差点を進行中、加害者が赤信号を認識しながら交差点に進入し衝突。被害者死亡。加害者は事故後被害者を救護せず、さらには被害者が赤信号を無視した嘘の運転ルートを供述した、救護したなど嘘の供述をしたなど被害者に責任を転嫁する言動を繰り返した。
・判決時の慰謝料の基準 2,000~2,200万円
・増額された慰謝料の額 3,000万円(800~1,000万円増額)
2. 他の損害項目に入らないものを慰謝料で斟酌しようとする場合
これは「慰謝料の補完的作用」と呼ばれるものです。
たとえばホステスの外貌醜状事案や歯牙傷害事案、生殖機能障害、嗅覚障害等で後遺障害が認定されても、後遺症逸失利益が算定しにくいような場合に後遺症逸失利益を認めず、慰謝料を増額することにより結果としての賠償額のバランスを取ろうとする手法です。
また、将来手術を行うことは確実であるがどの程度の時期・費用になるのか不明であり、手術により失われる労働能力も判然としない場合にもそれら損害は認めず、慰謝料を増額することにより結果としての賠償額のバランスを取ろうとします。
3. 被害者に特別の事情がある場合
被害者に特別の事情があり通常の場合に比べ被害者の無念さがより大きいものと認められ、慰謝料が増額される場合です。
次のような場合があります。
(1)人工妊娠中絶
(2)将来音楽教師になる夢を持ち努力したことが水の泡となった。
(3)被害者の子が重度の肢体不自由児であったが、事故により子の訓練介護ができなくなり子の身体機能に後退が見られた。
(4)婚約破棄
(5)離婚
以上のように慰謝料においては、相場よりも増額した金額が認められる場合があります。しかしそれは、被害者がそのような特殊事情を主張して増額を求めた場合のみです。
裁判の場合には相場が全てだと思ってうっかり主張を忘れると、その分の賠償が受けられなくなってしまうので注意するようにしてください。

