コラム「交通事故の慰謝料が増額される場合とは?」~通常の場合に比べ精神的苦痛の程度が大きい場合~

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交通事故の慰謝料が増額される場合とは?

谷原 誠

著者紹介

弁護士 谷原 誠 (みらい総合法律事務所)

みらい総合法律事務所では、交通事故の被害者からの相談が年間848件(2009年)も寄せられており、豊富な実績があります。交通事故の専門書も複数出版し、事務所内で研究活動も行っていますので、テレビのニュースから取材も受けています。
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交通事故の損害賠償の対象となる損害には、財産的損害と精神的損害があります。
このうち精神的損害が慰謝料のことです。
慰謝料とは精神的に被った苦痛のことですから、本来事案ごと人毎に慰謝料の額が異なるはずですが、心の中は見ることができないため概ね統一的な慰謝料の基準を定めて運用されています。

しかし、時と場合により相場的な慰謝料の基準を上回る判決がなされることがあります。これには3つのパターンがあります。

1. 通常の場合に比べ精神的苦痛の程度が大きいと見られる場合。
2. 他の損害項目に入らないものを慰謝料で斟酌しようとする場合。
3. 被害者に特別の事情がある場合。

以下、順番に検討します。

1. 通常の場合に比べ精神的苦痛の程度が大きい場合

これは主に加害者側の過失の大きさや事故後の態度の悪さ等により、事故に対する被害者の精神的苦痛が増大したと認められ慰謝料が増額される場合です。

加害者の過失の大きさでは、次のような事情が斟酌されて慰謝料が増額された判例がありますのでご紹介します。

加害者の過失が大きいために慰謝料額が増額された判例

(1)飲酒運転
(名古屋地裁平成3年8月12日判決)
被害者は64歳の無職男性、横断歩道を歩行中、普通トラックに衝突され死亡。加害者は飲酒運転をしていた。
・判決時の慰謝料の基準 1,800万円~2,000万円
・増額された慰謝料の額 2,200万円(200~400万円増額)

(2)スピードオーバー
(仙台地裁平成5年3月25日判決)
被害者は中学1年女子、歩道を歩行中、ハンドル操作を誤り歩道に乗り上げた乗用車に後方から衝突され死亡。加害者は指定最高速度(時速40キロ)を30キロオーバーする時速70キロで走行していた。
・判決時の慰謝料の基準 1,800万円
・増額された慰謝料の額 2,000万円(200万円増額)

(3)居眠り
(京都地裁平成13年11月16日判決)
被害者は49歳男性で運送会社の社員です。加害者運転の乗用車がセンターラインを超えて対向車線に侵入し、被害者が運転する乗用車に衝突して被害者死亡。
・判決時の慰謝料の基準 2,600万円
・増額された慰謝料の額 2,700万円(100万円増額)

(4)無免許
(大阪地裁平成14年1月22日判決)
被害者は大学1年生の男子、被害者が原付バイクで交差点を右折しようとしたところ、反対車線を直進してきた乗用車が直前で右折に気づき、バイクを避けようと急ブレーキを踏んだものの避けられずバイクに衝突した。加害者は速度違反や信号無視などを繰り返しており、違反点数が累積し本件交通事故の7ヶ月前に運転免許取消処分を受け無免許であった。また、酒気帯び運転でもあった。
・判決時の慰謝料の基準 162~177万円
・増額された慰謝料の額 240万円(63~78万円増額)

(5)信号無視
(名古屋地裁平成4年2月7日判決)
被害者は27歳男性会社員で、被害者が信号のある交差点を右折しようとしたところ、対向車線から60キロで走行する乗用車を追い抜いた上で、さらに赤信号を無視して交差点に進入した加害者運転のタクシーに衝突され死亡。
・判決時の慰謝料の基準 2,400万円
・増額された慰謝料の額 2,600万円(200万円増額)

(6)未必的故意
(大阪地裁平成9年3月18日判決)
被害者は57歳男性で、本件交通事故直前に起きた物損事故の処理のために加害者運転車両の前に立ちふさがったのに対し、飲酒もしていた加害者は飲酒運転の発覚を恐れ車を発進させて被害者に衝突・落下・転倒させた上、1360メートルも引きずり死亡させた。
・判決時の慰謝料の基準 2,600万円
・増額された慰謝料の額 2,700万円(100万円増額)

(7)脇見運転
(神戸地裁平成13年8月10日判決)
被害者は20歳男子大学生で、原付バイクを運転して走行していたところ、後方を走行中の加害者が運転中に目の乾きを感じ右手で両目のまぶたを押さえうつむいた状態で運転したため、前方を走行中の原付バイクに気づかず衝突させ死亡。
・判決時の慰謝料の基準 2,000万円
・増額された慰謝料の額 2,500万円(500万円増額)

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